リナは、ユイがパソコンを畑に持ち込んで仕事をしていると聞いて、目を輝かせた。
「すごい!私たちも、都会から来た人たちと一緒に、この町の魅力を発信したくて。もしよかったら、一緒に何かやりませんか?」
ユイは、予期せぬ提案に戸惑いながらも、リナの話に耳を傾けた。リナは、地元の特産品を使った商品の開発や、SNSでの情報発信に力を入れているという。ユイが都会で培ってきたウェブマーケティングの知識が、この町で活かせるかもしれない。そう思っただけで、ユイの心は高鳴った。
その日の帰り道、ユイはミサキに言った。
「なんか、面白いことになりそう」
「やろ?あんたの氣が、どんどん良いもん引き寄せてるんや。この町はな、そういう場所なんやで」
ユイは、リナの提案を受け入れ、協力隊の活動に参加することにした。畑でパソコンを開き、リナとオンラインで打ち合わせをする。都会では当たり前だったリモートワークが、ここでは全く違う意味を持っていた。
ユイは、リナと一緒に、地元の農家や漁師を訪ね、彼らの「智慧」をウェブサイトで発信するプロジェクトを始めた。
「紀美野町の土は、生きてるんや」
そう語るミサキの言葉の意味を、ユイは今、ウェブを通じて多くの人に伝えようとしていた。
パソコンの画面の中で、ユイは都会と繋がりながら、足元では土を踏みしめている。ウェブと土。二つの世界を行き来することで、ユイは自分の「居場所」が、どこか特定の場所ではなく、自分の心の中にあることに気づき始めていた。
ユイとリナの共同プロジェクトは、ウェブサイト『紀美野の智慧』として形になった。コンセプトは「この町に根ざす、生きるための智慧をウェブで伝える」。
ユイは、ミサキや地元の農家、漁師、そして和尚さんから教わった「氣」「分かち合う智慧」「命をいただく」といった、都会では知ることのなかった哲学を、丁寧に文章にしていった。記事には、ドクダミ茶の作り方、精霊馬の意味、アライグマとの共存など、ユイが実際に体験したエピソードを盛り込んだ。